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藤井家(東宅)(ふじいけ(ひがしたく))[Fujiike (Higashitaku)]

所在地
 中京区
 
選定番号
 第9−012号
  


推薦理由(抜粋)
 大正時代に建てられた町家で,内玄関の下には防空壕が残っている。祖父が購入したこの町家を,子どもに受け継がせたい。



認定番号
 第191号

認定理由
 藤井家(東宅)は,新町通から路地を入った奥に建つ,和風住宅である。棟札が残り,監督・島津常次郎,大工・島津清次の施工により,大正12年(1923)に上棟したことが分かる。施主は,当時弁護士をつとめていたと伝わる田原七三郎。昭和35年(1960)に新町通に絞問屋「藤井絞」を構える藤井家が不動産を購入した。以前は店舗と住宅を併用していたが,販売量が拡大したことに対応して,「東宅」を居宅にしたという。
 建物は木造2階建てで,路地奥の正面に玄関を構える。玄関は両開きの引戸であるが,壁内につくられた戸袋に収納される形式をとる。玄関右手に和室を設ける。正面を奥に進むと8畳座敷と次の間が設けられ,南側に庭が配される。座敷は床と床脇を備える。床脇は違い棚の下に,曲面を施した建具を嵌める地袋がつくられる。一枚板に曲線の敷居溝を彫る繊細なつくりである。元は,違い棚の上部に窓が設けられ,意匠的な演出とともに採光にも寄与していた。2階は2室の和室からなるが,奥の室への動線として短い廊下を設けている。庭は,雪見灯籠,蹲,伽藍石などが配される。路地奥であることを感じさせない,座敷からの広々とした眺めを演出している。このほか,主屋と同年に上棟した土蔵が残る。
 藤井家(東宅)は,近代的な住宅思潮が随所に繁栄された大正期の和風住宅である。都市部の路地奥に良質な生活空間を実現した住宅作品として高く評価される。



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