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旧橘家(望月家)(きゅうたちばなけ(もちづきけ))[Kyu Tachibanake(Mochizukike)]

所在地
 下京区
 
選定番号
 第8-048号
  


推薦理由(抜粋)
 昭和初期に建てられた総2階建ての表家造の町家。通り庭,火袋など,建築当時の意匠がよく残っている。今後も家族で維持・継承して行く。



認定番号
 第199号

認定理由
 旧橘家(望月家)は,化粧品問屋「橘金治商店」の京都店であった建物である。滋賀県の造酒屋に生まれた創業者・橘金治は京都高島屋や横浜の商社で洋品の仕事を学び,明治43年(1910)に大津で店舗を構えた。昭和5年(1930),西洞院通に市電が開通して京都駅からの交通の便が良くなったため五条堀川の南東の地に建つ表屋造の町家を購入し,居住棟のみを残して改築したのが現在の建物である。上棟御幣や建築申請時の資料が残り,大工・木津荘四郎の施工によるものと確認される。この際,居住棟も大きく改修されたと考えられるが,同棟の棟木には「紀元貮千五百三拾八年十二月」上棟の墨書が残り,元々は明治11年(1878)の遺構であったと判明する。昭和5年に新築された店舗棟は鼠色の漆喰で塗られた大壁の外観で,1階の出格子の腰部分に御影石を貼り,2階には3つの縦長窓を嵌める。ミセ土間と事務所として使用されたミセノマとの境には,大理石を用いたカウンターが設けられている。ミセから居室棟には通り土間が設けられているが,居室部分の中央に廊下を延ばして,北側に洋風応接室や和室,南側に台所を配する機能的な平面である。2階は,店舗棟に倉庫として用いた12畳室,居住棟に4室の和室を配する。玄関棟部分を2階建として居室にする点にも近代性が見られる。庭を挟んで居住棟の奥には,2階建の座敷棟が建ち,1,2階ともに床廻りを備える座敷が配される。
 旧橘家(望月家)は,明治前期の町家に増改築を施して建てられた昭和初期の店舗併用住宅で,京都の町家の近代化を示す事例として重要である。現在も化粧品販売の生業の名残りを空間として残す貴重な建物である。



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